屋外イベントに特化した、
音響と照明の選び方

屋外イベントに特化した、音響と照明の選び方

屋外での会場設営における音響と照明の選び方は、屋内とは全く異なる考慮が必要です。自然環境の影響を大きく受けるため、機材選定から設置、運用まで、様々な点に注意を払う必要があります。

ここでは、屋外イベントに特化した音響と照明の選び方をプロの視点から解説します。

屋外会場設営における音響の選び方

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屋外での音響は、音が拡散しやすく、風や周辺の騒音の影響を受けやすいという特徴があります。

⚫︎ 必要な音量(出力W数)の目安を把握す

・屋内の倍以上を目安に: 屋外では音が拡散するため、屋内のイベントの倍以上の出力が必要となることが多いです。

※スピーチやBGM中心のイベント:来場者1人あたり約2W3W

※ライブ演奏など音圧が必要なイベント:来場者1人あたり約6W10W

・会場の広さ、形状: 四方を建物で囲まれている場所と、開けた広場では、必要な出力が大きく変わります。音響業者と綿密に打ち合わせ、現地調査を行うことが不可欠です。

⚫︎ スピーカーの選定

・指向性の高いスピーカー: 音が広がりすぎず、狙った範囲に音を届けやすいスピーカーが適しています。ラインアレイスピーカーなどが効果的です。

・屋外対応・防水性: 急な雨にも対応できるよう、防水・防塵性能の高いスピーカーを選びましょう。テントなどで保護することも重要です。

・サブウーファーの活用: 低音を補強することで、屋外でも迫力のあるサウンドを実現できます。特に音楽イベントでは必須です。

・設置方法: 地面に置くタイプ、トラスから吊るすタイプなど、設置場所や景観に合わせて選びます。

⚫︎ マイクの選定

・ワイヤレスマイク: 広い会場での移動や、ケーブルによる転倒リスクを避けるためにワイヤレスが便利です。

・風防(ウィンドスクリーン): 屋外では風によるノイズ(ボコボコという音)が入りやすいため、マイクに風防を装着することが必須です。

・指向性の高いマイク: 周囲の雑音を拾いにくい、単一指向性や超単一指向性のマイクが適しています。

⚫︎ミキサー・アンプ

・屋外対応・電源: 精密機器なので、雨や結露、直射日光から保護する対策(テント、カバーなど)が不可欠です。電源確保が難しい場合は、パワードミキサー(アンプ内蔵型ミキサー)も選択肢になります。

・ノイズ対策: 風や虫の音など、屋外特有のノイズを低減できる機能を持つミキサーやエフェクターがあると便利です。

⚫︎電源の確保

・発電機: 会場に十分な電源がない場合は、発電機の準備が必須です。容量計算を正確に行い、予備も考慮しましょう。

・配線保護: 地面に露出するケーブルは、踏まれたり、車両に轢かれたりしないよう、ケーブルプロテクターなどで厳重に保護してください。

⚫︎ 周辺環境への配慮

・騒音対策: 近隣住民への配慮は最も重要です。音響シミュレーションを行い、音量の規制値を守るためのスピーカー配置や指向性を検討しましょう。イベントの前に、近隣住民への説明会を開くなど、理解を得る努力も大切です。

・風の影響: 強風時はスピーカーが揺れたり、音が流されたりする可能性があります。設置の際は、十分な固定と風対策が必要です。

屋外会場設営における照明の選び方

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屋外の照明は、日中の自然光との兼ね合いや、夜間の安全性・演出効果など、考慮すべき点が多岐にわたります。

⚫︎ イベントの時間帯と目的

・日中のイベント: 自然光が豊富なため、照明はあまり必要ありませんが、ステージ上など特定の場所を強調したい場合は、強力なLED照明やスポットライトが有効です。日差しが強い場合は、発熱の少ないLEDを選ぶと良いでしょう。

・夜間のイベント: 安全確保のためのベース照明と、演出のための特殊照明の両方が必要です。

 ※ベース照明: 来場者の通路、トイレ、飲食エリアなど、安全に移動できるよう全体を明るく照らす照明(投光器など)。

 ※演出照明: ステージ、オブジェ、建物のライトアップなど、イベントの雰囲気を盛り上げる照明(ムービングライト、LEDパーライトなど)。

⚫︎ 屋外対応・防水性・耐久性

・IP等級(防水防塵性能): 屋外使用を想定した照明器具には、IPIngress Protection)等級という防水・防塵性能を示す規格があります。最低でもIP65以上(粉塵の侵入がなく、あらゆる方向からの噴流水に耐える)の機材を選びましょう。

・耐候性: 直射日光、高温、低温など、屋外の過酷な環境に耐えられる素材や構造の照明を選びます。

⚫︎ 光源の種類

・LED照明: 現在の屋外イベント照明の主流です。

 ※メリット: 省電力、長寿命、発熱が少ない、色の変更が自由自在(RGBWなど)、調光が可能、コンパクトなものも多い。

 ※デメリット: 機材によっては初期費用が高い場合がある。

・ハロゲン/メタルハライドランプ: 従来からの照明ですが、消費電力や発熱量が大きいため、最近はLEDに置き換えられることが多いです。広範囲を明るく照らす投光器などで一部使われます。

⚫︎ 必要な明るさ(ルーメン)と照射範囲(ビーム角)

・ルーメン(lm: 照明の明るさを示す単位です。照らしたい範囲の広さや、必要な明るさに応じて適切なルーメン値の照明を選びます。

・ビーム角: 光の広がりを示す角度です。

 ※広いビーム角: 広範囲を均一に照らしたい場合(広場全体、通路など)。

 ※狭いビーム角: 特定の対象(ステージ上の人物、オブジェなど)をピンポイントで照らしたい場合(スポットライト)。

⚫︎ 設置方法と電源

・スタンド設置: 比較的簡単な設置方法ですが、強風対策としてウェイト(重し)でしっかりと固定することが重要です。

・トラス吊り: ステージ上など、高い位置から広範囲を照らしたい場合に有効です。専門業者による安全な設営が必要です。

・電源: 音響と同様に、十分な電源容量の確保と、防水対策がされた電源ケーブルや延長コードを使用します。発電機を使用する場合は、その容量も考慮に入れます。

⚫︎ 光害への配慮

・上空への漏光対策: 会場外へ光が漏れる「光害」は、近隣住民や環境への影響も考えられます。上方向への光の漏れを抑えるフード付きの照明や、指向性をコントロールできる器具を選びましょう。

・まぶしさ対策: 来場者や周辺に不快なまぶしさを与えないよう、照明の設置高さや角度、ルーバーの使用などを検討します。

まとめ:重要なこと

屋外での会場設営は、天候、風、気温、日照、周辺環境など、様々な外部要因に左右されます。そのため、何よりも経験豊富なプロの設営会社との綿密な連携が不可欠です。

⚫︎ 現地調査: 実際の会場の状況(電源、地面の状態、風向き、日当たり、周辺環境など)を徹底的に確認します。

⚫︎ リスクマネジメント: 悪天候時の対応策(雨天中止・延期基準、機材の保護、避難経路の確保など)を事前に確立します。

⚫︎ 予備機材: 万が一の故障に備え、主要な機材は予備を用意しておくか、すぐに代替品を手配できる体制を整えます。

これらの点を踏まえ、イベントが安全に、そして最高の形で成功するよう、設営のプロフェッショナルとよく相談しましょう。